インフレターゲットでハイパーインフレにはならない!(日銀はインフレ恐怖症)
2月14日のことですが、政府の圧力に押される形で、日銀が「中長期的な物価安定の目途」を当面「1%」とし、資産買い入れ基金の10兆円増額を発表しました。
日銀が実質的なインフレターゲットとして1%を掲げたことにより、株価は上昇、超円高であった円も円安方向に推移しました。
これは非常にいいことだと言えます。
であれば、もっと早くやってほしかったし、1%といわず、FRBと同じ2%くらいの目標にすればいいと思います。
そもそも、日銀がインフレターゲットに消極的なのは目標を設けてそれを達成できなかった場合に責任を取らされるのを嫌うためといわれていますが、日本経済の全体のことを考えれば必要なことを責任逃れのために行動できないというのは情けない話です。
もうひとつ、日銀はインフレ恐怖症とも言われています。ひとたびインフレが暴走すれば、それを止めるのは至難の業だと考えられているからです。インフレが制御できないでハイパーインフレになれば、物価が10倍、100倍となり、日本での預貯金はその価値が1/10、1/100となってしまい、国民生活は大混乱となる、というわけである。
しかし、これも事実とは違うことです。
まず、ハイパーインフレが歴史上起こった国はモノ不足である貧しい国(ジンバブエなど)や敗戦後の日本やドイツのように戦争で生産力が著しく低下し、需要に対し供給が圧倒的に足りなくなった結果、物の価値が釣り上がっていったためで、物余りの日本、供給過多で需要が足りないといわれている日本では起こりません。
またインフレが暴走するというのも間違いがあります。
日本では石油危機(オイルショック)の時に年率30%のインフレを経験しましたが、当時の田中内閣から内閣が代わって、財政と金融の引き締め政策に転じたことによりインフレは抑えることが出来ました。(もちろん、財政と金融を引き締めれば、企業の設備投資などはやりづらくなり、景気は悪化しましたが。ちなみにオイルショック後の1974年にマイナス成長となりましたが、その後1975年以後は5%前後の成長となりました。)
また、日本以外の海外では2~3%のインフレ率を維持していて、決してコントロールできないとは言えません。
世界のインフレ率
確かに、一度高いインフレ率になってしまえば制御は難しいかもしれませんが、2~3%くらいの緩やかなインフレ率であれば制御可能なのです。
例えば、自動車では、アクセルの踏み方で、時速 100 キロとか、101 キロとか、大きな速度では1キロ単位の微妙な制御は難しいですが、時速 2キロとか、3キロとか、小さな速度では1キロ単位の微妙な制御はしやすいということです。
以上みてきたように、2月にインフレ目標を1%にし、量的緩和を宣言したことにより、円安と株高をすることに成功したことも合わせてを考えれば、日銀がもっと強い姿勢でデフレ脱却のために動けば、日本経済はもう少し上向くのではないでしょうか。
2012/4/23 (S)