第7回勉強会 「消費税増税を含めた今後の日本経済」のレポート P1




※当日配布した参考資料については省略をしています。

【1】最近の日本経済の動向


 以前、「日本は財政破たんをするか!?パート1」で日本は財政破綻をするかどうかについて検証しました。
詳細はこちら・・・

今回は、消費税増税を含めた、日本の財政破綻を防ぐための対策とその影響について考えてみました。

まず、「日本は財政破綻をするか!?パート1」で取り上げた3つの本の中で最もポジティブなことを書いていた三橋貴明さんの本がありました。
 内容は下記になります。

「日本の未来、ほんとは明るい!」「何があっても日本経済は破綻しない!本当の理由」
(三橋貴明著)
①日本は経常収支黒字であり、対外純資産が世界一である。
②自国通貨建て債務ならば破綻のしようがない。
③需要よりも供給能力の高い日本でハイパーインフレーションはあり得ない。
④日本の国債金利の支払は対GDP比で1.3%と主要国最低である。
⑤日本では政府が負債を増やしても家計の資産が増えるだけ。
⑥増税をするより建設国債を発行して投資をし経済成長を図るべき。
⑦日銀が国債を買ってもハイパーインフレーションにはならない。


ところが、幾つかの点について、最近、違う状況になってきました。

(1)2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落

 まずは、上記①、②についての変化に注目したいと思います。
去年、日本は貿易赤字になりました。海外からの配当などで稼ぐ所得収支については黒字であるため、経常収支(=貿易収支+所得収支)としてはまだ黒字ですが、前年比43.9%減となっています。このまま円高による産業空洞化で貿易赤字が広がれば、経常収支は10年代に赤字になる、との意見もあります。
経常黒字が縮む一方、海外への直接投資が月間1兆円前後の規模で資金流出しているため、国内での国債の償還が難しくなってきており、外国人投資家による日本国債の購入比率が高まっています。実際、去年7月~9月には純発行額の約7割を外国人投資家が消化しています。(もちろん、ギリシャ危機の影響で安定資産である円にお金が流れてきたという一時的な理由が大きいですが。)
 外国人による日本国債の保有比率が高まれば、日本はこれまで以上に財政規律をめぐる海外の目を意識せざるを得ない局面に入りつつあるといえます。実際、2/24日経新聞には米格付け会社ムーディーズ担当者が消費税増税法案の成立に向けた進展が見られなければ「見通しをネガティブに変更することは容易に想像できると」と警告したとされています。
このため、上記①、②について揺らいできたといえます。
ちなみに対外純資産は250兆円ほど。一方の国債残高は1,000兆円ほど。対外純資産が世界一だからといって、国債を賄いきれないわけで、対外純資産世界一の金持ち国家だから財政破綻をしないというのは間違いといえます。


(2)「金利低下ボーナス」の時期が過ぎてしまった。

上記④の日本の国債金利の支払い率は少ないとされていますが、すでに金利低下ボーナスの時期は過ぎてしまいました。金利低下ボーナスとは日本では2000年以降に1990年代に発行された高金利の国債の借り換えで金利が下がることを言います。
例えば、2002年度に償還期限を迎えた10年物国債は金利が5%強だったのに対し、新発国債の平均金利は1%台半ば。借り換えで3%強の利払い費が減ったことになります。
しかし、低金利が長く続いた結果、長期金利はすでに下げ止まり、借り換えしても金利差はわずか0.5%まで縮小してきました。逆に、国債残高は1990年代からの20年で4倍に膨らんだため、利払い費は増加に転じ始めました。(資料②参照)
 また、ニッセイ基礎研究所では長期金利が2.5%まで上昇すれば、2020年度には利払い費が23兆円を超える(7.9兆円である2010年より約15兆円増加する。)と試算しています。


(3)考えうる最悪のシナリオ

 円高による国内産業の空洞化→貿易赤字拡大→経常収支も赤字に転落→国内での国債未達
(国内純資産1,100兆円を国債残高が超えた時点で国債未達が起きうると考えられます。)

国内での国債未達→国債の下落=金利の上昇
(外国人投資家へ購入してもらう必要があり金利は上昇します。)

金利の上昇→利払い負担の増加→財政は行き詰まり、ギリシャ化する。

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